はっくべのブログ(2番地)

書きたいことを書いたのを置いておく場所にしよう

映画感想文・THE FIRST SLAM DUNK

 本を読んでの感想文は読書感想文。じゃあ映画は?舞台は?観劇感想文?それだとどっちだかわかんないね。なのでとりあえず映画感想文にしておきます。

 

 名古屋旅行最終日にいももちさん、いてづきさんから与えられた宿題、「スラムダンクの映画を見て感想文を書く」これをこなさないと旅行が終わったとは言えない。なので見てきました。

 私はスラムダンクを見たことがありません。バスケの話なのと、「諦めたらそこで~」と「バスケがしたいです」と「左手は添えるだけ」は知っている。昔、家族が親戚の誰かに貰ったのか2.5頭身くらいのキャラのキーホルダーがあった気がする。確か、赤くてコーンロウとかパンチパーマとかそんなヘアスタイルのキャラだったような……、という程度。そんなミリしらな状態でどれだけ楽しめるのか興味はありました。映画情報公開時に声優がアニメ放映時と変わっていることへ批判が生じたけれど、徐々に「おもしろいじゃん」と受け入れられたのはツイッターで知っている。

 初見って一度しか無いじゃないですか。思ったことを覚えておきたいけれど話の展開に脳のリソースが持って行かれて、思ったことは古い分から順に失われてっちゃう。ツイッターを開いていれば逐一思ったことを書けるのですが、映画館で映画を見るときにツイッターはできない。じゃあ、紙とペンを持ち込んじゃえばいいんじゃない?と前々から思っていました。職場から裏紙をひとつかみとボールペンを胸ポケットに装備し乗り込みました。

 一応断っておくと、片田舎なので劇場内はガラガラです。自分の列と前後の列に誰もいない席を確保し、視線はスクリーン固定で頭を動かさない。紙をめくるなど音を立てる場合は大きめのBGMが流れているタイミングに合わせるなど極力他のお客さまの迷惑にならないようにしました。

 アナログツイッター方式はとてもよかったです。A5サイズの紙を9枚消費しました。手元を見ずに書いているから文字同士が重なっていたり解読不能な部分があったりしています。このメモを元に感想を書きます。

 

 

「おもしろかったあ」「余裕で今まで見たスポーツモノの頂点に立った」「瞬きすらもったいない」「これは映画館で見るからこそ輝く作品」

 これがラストまで見終わったときの感想です。まずつくりがうまい。無駄が無いからダレが無い。ひとつの試合の中で回想を挟んでいきキャラの背景が明らかになっていく様はsteamの雰囲気重視パズルゲーみたいだなって思いました。そういうの好きです。

 そして、試合運びの中にもドラマや成長があり、回想抜きにしても見応えがあるのでただの総集編で終わっていない。そこがすごいです。もう見せ場は終わったかなって思ってもまだ出てくる。残り数秒からの声が消え、動きがスローになり時間が引き延ばされる演出がすごい。まるで自分が体験しているかのように錯覚させられ呼吸すら制御される感覚だった。音と映像の使い方が上手いからこそ成せる業。この作品なんか賞とってます?アカデミー賞とか。取ってなかったら嘘じゃん。あまり数を見ているわけではありませんが、スポーツモノの映画、マンガ、アニメ作品における私の中での1位は「ピンポン」でした。今回のスラムダンクはそれを抑えて1位に君臨しました。

 

 ここからは概ねメモに書かれた順番通りにいきます。

「すげえ、CGなのにアニメだし実写っぽい」

 近年の映画でキャラが平面イラストじゃなくてCGで表現されているものがあるじゃないですか。それがなんとなく苦手なんですよね。粘土みたいな質感を想像しちゃうけどクレイアニメとは違うわけで、どう受け取って良いかわからない困惑がノイズになってしまって作品に入り込めない的な。CGで表現しなくてはいけない必要性を知らしめてくれない限りは使って欲しくないと思う過激派です。この映画も冒頭でキャラがCGであるのを見た瞬間、眉をひそめましたがそれも早々に解消されました。マンガ調なのに実写っぽい。キャラクターそれぞれに血が通っている作品だからこそ肉を与える必要がある。そう思わせるほどの説得力。アニメでも実写でも表現することの出来ない領域だと思いました。

 

「ちゃんとバスケットボールの音だ」

 この作品、音にもこだわっている。バスケットボールの弾む音、本物だあ。ちょっと重くて固くてぶつかると痛いのを思い出しました。

 試合中のBGMはいっそうるさいくらいに鳴っているから無音が引き立つ。計算された緩急がものすごい。

 

「何その顔」「顔こわ」「モブ顔こわ」「顔こわ」「こわ」

 あまりにも書かれすぎてて取り上げないわけにはいかなかった。顔こわ。高校生ってあんな顔してたっけ。これが書かれているのがメモ1~2枚目なので次第に慣れてはきた模様。バスケットボール選手だから体格が良いにせよ威圧感ハンパない。リアルにいたら10mくらいは距離を取りたい。

 

「なんでそんな頭に?」「性格変わった?」「髪型、ソータに寄せたんだ」「リョータ性格変わった?」

 前項に近いことは近い感想。リョータについて。かわいいふわふわヘアーがどうしてあんな風になったのかと。何かこだわりが無いとそうはならなくない?と思っていました。が、回想シーンでのソータをみると毛質こそ違うものの似ているなあと。兄ちゃんリスペクトなんだと気づいてスッキリしました。

 ところで、リョータって周囲から影響を受けやすい子なんですかね。純粋とも言えるかも。小、中、高と性格の変化が大きい。回想シーンに出てきたのはその中でも大きいエピソードだけどそれ以外にも多くの出来事を経験してきたんだろうなあが語られずとも伝わりました。

 

「花道が主人公なんか」「花道人望あるな」「シャツ引っ張るのはアリ?」「よく見てる花道こわ」

 桜木花道について。今回の映画はリョータが主役だけど、もしかしてスラムダンクという作品は彼が主人公なのでは?そう思わせるだけの主人公性が花道にはあった。ムードメーカーという表現で合っているのかわからないけど、あの試合は桜木花道が空気を支配していた。プレイ経験などは関係なくフィールド上にいなくてはならない存在、そんなキャラだ。よく見てるし、よく走るし、よく追うし、よく跳ぶ。そしてよく届く。自称ではなく本当に天才じゃん。

 ところでシャツ引っ張るのはアリなんですか?何があってもレッドカードを出さない審判の心が広すぎる。あと審査員?の回避能力も高い。

 

「ひとりぼっちのリョータに声掛けたお前がミツなの」「ちゃんと学ラン白T白シューズ履いてるのかわよ」「どうしてロン毛ストパーに」

 ノリオと一緒にいるロン毛ストパーなヤンキーがかの有名な三井寿なのね。リョータと初邂逅した折にはバスケの上手いお兄さんだったのに中学高校で何があったのか。ビジュアル変わりすぎてて全然気づかなかった。不良だけどつるんでるメンバー含めてみんな制服をキッチリ着てるし上履きも履きつぶしていないところがかわいかったです。チャリチャリ鳴っているのはお財布のチェーンとかなのだろうか。

 

「旅費いくらかかったの」「リストバンドここなの」「ていうかvs山王実質決勝やんけ」

 思うところがあったリョータが沖縄に行ったシーン。そこで現在対戦している山王という学校への認識がただの高校ではなく因縁のある存在へと昇華される。ギャラリーのモブのセリフからこれが決勝戦ではないことが明らかだけれどリョータにとっては最も重要な試合だというのがわかる。なぜこの映画の主役がリョータで、なぜこの高校との試合なのか、その必然性が気持ちいい。ヘルメットのあごひもはしてね。

 

 

「『手のひら』」「兄ちゃんが言ったやつ」

 夜ランニングするリョータに偶然あったヒロイン風味のマネージャーみたいな女の子が言ったセリフから。中学校の球技大会で隣のクラスだったか上の学年のクラスだったかが手のひらに黒マジックで何か書いてた元ネタこれか!と時を超えた伏線回収。「はっくべちゃんも書く?」ってそこのクラスの仲良い子に油性マジックきゅぽっとされたけど「しばらく落ちなそうだからヤダ」って言ったの覚えてる。はっくべちゃん自由に生きているので。

 

「本物の試合見てるみたい」「リョータ話しかけるようになったじゃん」「多くを差し込まなくてもキャラが見えてくるのおもしろ」「ムダが無い」「もはや芸術作品。クオリティが高すぎる」

 主要な回想が終了し、技見せ→不利→個々の覚醒を経て内容的にはここら辺が折り返しポイントじゃないかな。ストーリーの主軸が過去から現在へと切り替わり、スポットライトを浴びるのが個からチームに変わる。試合内における流川の成長、周囲に目を配れるようになったリョータ。そして花道と流川の連携がアツい。この二人、対になる立ち位置のキャラだよね。自称天才とマジの天才。

 

「いろいろ乗り越えてチームになったのが見える」「終盤にはみんな好きになる」「原作履修したくなるのわかるわあ」

 背中を痛めた花道の異変に気づくかどうかでプレイヤーの能力差を描くのもかっこいい。川田真っ先に気づいたよね、よく見てる。マネージャーもすごい。バスケってこんな少人数ドラマなんだなあ。

 大人の目線から見ればここで下げた花道をもう試合に出すわけにはいかない。そんなことわかっているのに動かしてしまうのが桜木花道桜木花道たる所以だなあと思いました。この試合の後の桜木花道がどうなったのかは見たいけど見たくない、複雑感情。

 

「流川の見せ場でラストだと思ったのに花道フェイズ」「花道タフすぎ」「あいつゾンビ?」「まだ行くのか」

 残り数十秒、怒濤の桜木花道。華々しく活躍すればするほど未来が怖い。

 

「もうどっちが勝ってもいいじゃん」「ブザービーーーター!!」

 バスケ詳しくないけどこれは知ってる。シュート放った瞬間に残りゼロ秒になってそのボールが入る熱いやつ。心のスタオベだった。すごい熱い試合、こちらの心拍数まで上がってしまいそう。

 相手チームのキャプテン、欲しかった「敗北の経験」を得られたねえ。その後海外のコートで再びリョータと出会うシーンとか、体格の小さい日本人同士なために同じポジションなとことかエモかった。リョータが黄色いユニフォームに身を包んでいるのもまたエモい。最後の写真よ。

 

 

 さて、どこに挟んで良いのか迷ったので最後に持ってきましたが、リョータのお母さんもまたこの作品の影の主人公と言っても過言ではない気がします。

 まだ小さい3人の子どもを抱えているのに(おそらく)夫を亡くし、それからまもなく長男も事故で喪ってしまう。長男がバスケットボールにおいて天才的なプレイヤーで、その影をいつまでも追いかける次男。自分自身や生活のためにも早く立ち直るべく、きっと否応にもソータのことを思い出させるバスケのことを一度は憎んだんじゃないかな。封をして忘れようとしたのにリョータが許さない。親として、強引に捨てることも引き離すこともできたけど、それは決してしなかった。苦しみながらもリョータ自身の向き合い方を尊重して、積極的ではないにせよ応援する姿、いいお母さんだよなあって思った。

 試合の後の海でのシーンが印象的で、「リョーちゃんおかえり」のセリフは彼女の止まっていた時が動いたんだなあと思った。と同時にリョータも前に進めるようになった。「3日ぶりじゃん」って笑ってたけどそうじゃなくて8年分なんだよね、二人にとっては。17歳になってようやく12歳のソータを追い抜けた、その年齢差では3歳なのに生じた5歳分の差がソータがやはり天才で代わりには成り得ないことを象徴しているのが良かったです。

 この家族にとって妹ちゃんが光だなあと思いました。きっと当時を覚えていない彼女だからこそ前に進める力を持っている。

 

 

 メモの掘り起こしはこれで終了です。すごい作品だった。薦めてくれたいももちさん、いてづきさんありがとう!これにて宿題提出とします。