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読書感想文・きたきた捕物帖

読書メモ

作品名:きたきた捕物帖

2022年3月15日 第1版第1刷

著者:宮部みゆき

購入日:2022年5月23日

読み始め:2022年5月23日

読み終わり:2022年6月11日

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 NGMEさんの定期演奏会の翌日、帰路のお供に購入。

 普段の行動エリアには無い書店なのでブックカバーがレア。書店ごとのブックカバーの違いを楽しむのも好き。エコではないけれど。積読本が多いので未読本はブックカバー有り、既読本はブックカバー無しで管理しています。とはいえネットとか中古で買うとカバーが付いてこないのでカンペキではない。

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 「きたきた捕物帖」は作者の得意な時代、得意なフィールドの作品でした。江戸時代、本所深川が舞台の物語。これまでの作品で同一の時代・場所のシリーズはいくつかありましたが、明確にリンクさせてくるのは初めてかも?はっきりと断言できないけれど。

 同じく江戸時代設定の三島屋変調百物語シリーズと同様にライフワークにするということなので、きっと長く続くシリーズになる、といいな。怪談寄りなのが三島変調百物語シリーズ、ミステリー寄りなのがきたきた捕物帖シリーズだと思っていいはず。とはいえ三島屋~にもミステリーな話はあるし、きたきた~にも怪談な話はあります。その配分が違うってだけ。

 

 第一巻にあたる今作は短編4話で構成され、主人公の北一が周囲の手を借りながら不可思議な出来事を解決しながら少しずつ成長し、やがて独り立ちするまでのお話。季節は初春から夏まで。

 各話で少しずつ季節を動かしてくのやっぱり上手いよなあって思いながら読みました。髪の結い方とか着物の意匠の描写が多かった印象。同じ世界観設定の作品の中でも以前は食べ物の描写が多かった記憶があるので、時を経て作者の興味が移っていったのかな、それとも主人公や作品として変えているのかなと考えながら読むのが楽しいです。私は前者だと思っています。その時代のなんたら染めとか何々織りとかホニャララ巻きとかサッパリなので、そういうのまとめられている資料集みたいなのどっかにないかな、欲しいなと思いつつしっかりと探していない。いずれ見つけて入手したいけどそれはいつになるのか。

 

 第一話「ふぐと福笑い」。まずタイトルがいい。初っぱなから主人公の親分がフグ毒に当たって死んだり、災いをもたらす福笑いが登場したりと内容は決して明るくはないけれど、一発目として縁起がよさそうなタイトル。この福笑いは目隠しをした上で置き直しは禁止、一度できちんと整え最後にみんなで褒めて箱に入れて封じない限り災いをもたらすという怪異めいた存在。それもまたいい。一発目に怪談チックな話を持ってくることで、そういう雰囲気のシリーズなのかなと思わせておいてからの以降は人間が原因のミステリーにするという手法。特に第二話の「双六神隠し」によく効いた。毎話毎話今回はどっちかな?って思いながら読む楽しさがある。

 今後もう1人の主人公になるであろうキャラの初登場回でもある第三話「だんまり用心棒」はすごかった。一見関係なさげに思える小粒のエピソードが最後に繋がり合うのは気持ち良い。北一視点で進むという縛り?があるため、個々のエピソードの最初と最後の時間経過が長くなり、そういうのってまとめづらくなるのにそれを綺麗に収めるのは技量の高さが成せる業だよなあと思いました。これができるのは並大抵のことじゃないというのはド素人の一般読者な私でもわかる。お話としても作中で一番の盛り上がりどころでアツいです。

 第四話「冥土の花嫁」は本筋の謎解きよりも北一の独り立ちへ向けての奔走の方が印象強かった。第一話(あるいはそれ以前)から出会ってきた人々に支えられ、助けられ、自身を厄介者扱いしてくる者と決別し立ち上がる様は今後の展開や作品の雰囲気を象徴する姿になっている…………と私は思います。早く喜多次とニコイチになっておくれ。また作品通して冷静に北一の影なるブレーンとして支援しているおかみさんが熱くなって大芝居を決めるのもまたカッコイイ。盲目なのにあやまたずビシッと十手を突きつけるシーンはそこだけでも映像化希望する。盲目の千里眼かっこよいよ。

 

 職場の昼休みに少しずつ読み進めていたのだけれど、やっぱり続きが気になって最後は持ち帰って一気に読みました。良い作品は良いのです。自明の理。なんと次の巻も既にハードカバーでは出ています。気になる~!ただハードカバーは持ち運びしづらいので文庫本になるのを待とうかと思っています。こっちも文庫本までは待ったわけだし待てる待てる。でもなあ、早く読みたいなあ。ぐぬぬ